先週の説教において申しましたが、今私たちが読み始めているマタイ福音書の８章９章には、主イエスのみ業、特に病気を癒したり、悪霊を追い出したりするみ業がまとめて語られています。先週は一つ目のみ業、らい病を患っている人の癒しを読みました。本日の５節以下は第二のみ業です。主イエスがカファルナウムの町に入られると、一人の百人隊長が近づいて来たと５節にあります。カファルナウムの町は、主イエスがガリラヤにおける伝道の根拠地としておられた所で、この後の１４節以下にあるように、そこには弟子のペトロの家があり、主イエスはそこを定宿としておられたのです。７章までの「山上の説教」を語り終えて山を下りて来られた主イエスが、そこへと帰って来られた、そこに、ある百人隊長が近づいて来たのです。百人隊長とは、ローマの軍隊において、百人の部隊を率いる下級将校です。今はパレスチナと呼ばれるこの地には、ローマ帝国の軍隊が常駐していました。実質上の支配はローマが握っていたのです。その部隊がガリラヤのカファルナウムにもいました。その百人隊長であるこの人は、当然ユダヤ人ではありません。いわゆる異邦人です。ただ、ローマ人であったとは限りません。ローマは、帝国に組み入れていった各地の人々を軍隊に取り込んでいきましたので、ローマ以外の地の出身者である可能性も強いのです。しかしいずれにしても異邦人であることは確かです。その百人隊長が、主イエスのもとに近づいて来たのです。先週の場面では、らい病を患っている人が「イエスに近寄り」とありましたが、それと同じ言葉がここに用いられています。らい病を患っている人が、主イエスと、その後には従って来ている多くの群衆がいるわけで、そこに近寄ることは大変なことなのだと先週申しましたが、この百人隊長が主イエスに近づいて来たことも、別の意味で大変なこと、驚くべきことであると言えるでしょう。彼は近づいて来ただけではなく、主イエスに懇願して「主よ、わたしの僕が中風で家に寝込んで、ひどく苦しんでいます」と言ったのです。つまり彼は主イエスに、自分の僕への救いを、癒しを願ったのです。異邦人が、しかもユダヤ人たちを今支配しているローマの軍人が、つまりユダヤ人たちにしてみれば、自分たちを支配し、自由を奪っている憎っくき敵の一人が、ユダヤ人である主イエスにこのように救いを求めることは普通はあり得ないことです。ですから、これと同じ話を語っているルカによる福音書７章の記事を見ますと、この百人隊長が、ローマの軍人でありながら、ユダヤ人たちに親切にしてくれており、会堂を建ててくれた、だからこの人の願いを聞いてやってほしい、とユダヤ人の長老たちが主イエスに願ったということが書かれています。そういう特別な事情でもなければ、本来このような願いをすること自体が考えられないことだったのです。しかしマタイによる福音書はそのようなことを全く語りません。むしろマタイはこの出来事が普通では考えられない驚くべきことだったということを強調しようとしているようです。らい病を患っている人が主イエスに近寄っていったことも、この百人隊長が主イエスに近づいていったことも、どちらも驚くべき出来事だったのです。

　主イエスは、彼の懇願を聞いて、「わたしが行って、いやしてあげよう」と言われたと７節にあります。しかしこの言葉は、このように訳すのがよいのか、議論があります。別の解釈の仕方をするとここは、「わたしが行って彼をいやすのか」という疑問文にもとれるのです。そうするとこれは、「わたしに行ってあなたの僕を癒せと言うのか」という意味になり、「そんなことはできない」という拒絶の言葉になります。主イエスは「わたしが行って、いやしてあげよう」と気前よく言われたのか、それとも「そんなことはできない、しない」と拒絶されたのか、正反対の読み方ができるのです。このことは、文法上からのみ言われていることではありません。この話を、この福音書の１５章２１節以下の話と重ね合わせて読む時に、「わたしに行ってあなたの僕を癒せと言うのか」という拒絶の言葉として読む必然性が見えてくるのです。１５章２１節以下には、主イエスがティルスとシドンの地方に行かれた時のことが語られています。そこで一人のカナンの女が、悪霊に苦しめられている自分の娘の癒しを主イエスに願ったのです。カナンの女とは、つまり異邦人です。その女の願いを聞いた時主イエスは「わたしは、イスラエルの家の失われた羊のところにしか遣わされていない」と言って女の願いを拒絶されたのです。イスラエルの家、つまりユダヤ人のために自分は遣わされているのであって、異邦人に救いを与えるのは私の任務ではない、ということです。さらに主イエスは「子供たちのパンを取って小犬にやってはいけない」とすら言われました。ユダヤ人は子供たちであるのに対して、異邦人は小犬だというのです。主イエスがそのように異邦人からの救いの願いをある意味で大変冷たく拒絶されたことと合わせて考えるならば、同じ異邦人の願いを、この８章では気前よく「わたしが行っていやしてあげよう」と言われたとは考えにくいのです。ここは「わたしに行っていやせと言うのか、そんなことはできない」という意味にとった方がよいのではないかと思うのです。

　また、この７節の読み方によって、８節の百人隊長の言葉の意味も変わってきます。彼は「主よ、わたしはあなたを自分の屋根の下にお迎えできるような者ではありません。ただ、ひと言おっしゃってください。そうすれば、わたしの僕はいやされます」と言いました。７節の主イエスのお言葉を、「わたしが行っていやしてあげよう」ととるならば、この言葉は「いいえそれには及びません。ひと言お言葉さえ下されば十分です」という意味になります。それはこの百人隊長の自己卑下、謙遜の言葉ということになるでしょう。「イエス様にわざわざ来ていただくなんてもったいない、わたしはそんなことに相応しい者ではありません」ということです。それは彼が特別謙虚な人だったと言うよりも、異邦人としての自分の立場をわきまえていたということです。当時ユダヤ人は異邦人の家に入ることすらも避けていたのです。彼はそのことを知っているから、主イエスが「わたしが行っていやしてあげよう」と言って下さったけれども、遠慮して、「お言葉だけで結構です」と言った、それが第一の読み方です。しかし第二の、「わたしに行っていやせと言うのか」という拒絶の言葉として７節を読む方をとるならば、彼の言葉の意味は変わってきます。その場合にはこういう意味になるのです。「主よ、おっしゃる通り、わたしはあなたを自分の屋根の下にお迎えできるような者ではありません。異邦人である私があなたの救いを求めることなど分を超えたことであるとわきまえています。しかしせめて、あなたのお言葉をいただけないでしょうか。それだけで、私の僕は癒されると信じています」。百人隊長の言葉をそのように読んでいきますと、先ほどの１５章のカナンの女の話とさらに重なってくるのです。主イエスに「子供たちのパンを取って小犬にやってはいけない」と言われた彼女は、「主よ、ごもっともです。しかし、小犬も主人の食卓から落ちるパン屑はいただくのです」と言ったのです。彼女は主イエスに犬呼ばわりされてしまったのです。お前たち異邦人は犬と同じだ、人間様のための救いを犬に与えるわけにはいかない、と言われたのです。「犬とは何だ、馬鹿にするな、もう頼まない」と怒って去って行っても不思議はありません。しかし彼女はそうではなくて、「ごもっともです、私は確かに犬のような者です、あなたの救いに相応しい者ではありません。しかしその犬が、主人の食卓のパン屑で養われるように、あなたの恵みのおこぼれに預かりたいのです」と願ったのです。百人隊長の言葉も、それと同じことを言っていると読むことができるのではないでしょうか。この百人隊長も、あのカナンの女も、異邦人であるゆえに、主イエスの拒絶を受けたのです。おまえに与える救いはない、と言われたのです。しかし彼らはそれであきらめなかった。それは、あきらめずに執拗に求め続けた、ということではありません。彼らは、主イエスのお言葉を受け入れたのです。「おっしゃる通り、私はあなたの救いを受けるに相応しい者ではありません」と認めたのです。その上で、「しかしせめて、お言葉を下さい、あなたの救いのおこぼれにでもあずからせて下さい、そうすれば私は救われます」と願ったのです。この彼らの願いを、主イエスは受け止めて下さいました。カナンの女に対しては、「婦人よ、あなたの信仰は立派だ。あなたの願いどおりになるように」と言って下さったのです。この百人隊長には、「イスラエルの中でさえ、わたしはこれほどの信仰を見たことがない」と言って下さり、そして１３節では、「帰りなさい。あなたが信じたとおりになるように」と言って下さったのです。つまり主イエスは彼らの中に、まことの信仰を見て下さったのです。そして彼らに救いが、癒しが与えられました。このように、この二つの話は密接に重なり合うのです。ちなみに、百人隊長は自分の僕の癒しを願っていますが、この「僕」という言葉は、「子供」とも訳せるのです。ひょっとしたら彼は、カナンの女と同様に、自分の子供の癒しを求めて主イエスのもとに来たのかもしれません。そして信仰によって、彼らは救いにあずかったのです。主イエスの思いもそこにあったと言えるでしょう。異邦人の救いの願いを冷たく拒絶される主イエスの姿は私たちをとまどわせます。イエス様は人を区別なさらず、誰でも受け入れて下さる方ではないのか、と思います。「わたしが行っていやしてあげよう」という訳の方が好まれるのはそういう思いからでしょう。しかしあのカナンの女の話からもわかるように、主イエスの拒絶はそれが最終的なご意志ではないのです。むしろ主イエスは拒絶によって、彼女のあの信仰の言葉を導き出しておられると言うことができるでしょう。本日の個所にもそういうみ心が働いていると読むことができると思うのです。

　さて、この百人隊長は主イエスに、「ただ、ひと言おっしゃってください。そうすれば、わたしの僕はいやされます」と言いました。普通、病の癒しは、その人に手を触れることによって行われるのです。先週のらい病の人の癒しも、この後のペトロのしゅうとめの癒しもそのようにして行われています。しかし本日のこの癒しは、主イエスのみ言葉のみによる癒しです。主イエスは癒された人と会ってもいません。同じ空間にいたこともありません。そういう中で、言葉のみによる癒しが行われたのです。それが、この癒しの出来事の特徴です。そしてそれは、この百人隊長の信仰によることだったのです。１３節に、「帰りなさい。あなたが信じたとおりになるように」という主イエスのお言葉があります。そして、「ちょうどそのとき、僕の病気はいやされた」と言われているのです。主イエスの一言で病気が治りました。その一言とは、「中風よ治れ」とか「病よ出ていけ」という言葉ではなくて、「あなたが信じたとおりになるように」というものでした。つまりこの癒しは、百人隊長の信仰によってもたらされたのです。彼がどう信じたかが、何が起ったかを決めたのです。ですからこういうことが言えるのではないでしょうか。例えばもしも彼が、イエス様にお願いすれば、僕の病気が少しはよくなり、苦しみが緩和されるのでは、と信じていたならば、その通りになった。つまり、僕の病気は完全には治らず、症状が少し緩和されるだけだった、ということです。どう信じているかによって、与えられる恵みは変わってくるのです。彼は、そんな中途半端な癒しを信じていたのではありませんでした。「ただ、ひと言おっしゃってください。そうすれば、わたしの僕はいやされます」。それは、主イエスの一言で、僕の病気が完全に治る、全く健康になる、ということです。彼はそう信じていた。それゆえにその通りのことが起ったのです。

　そのように考えてきますと、この話は、イエス様は病気を癒し、苦しみを取り除く力を持っておられるということを、疑うことなく信じる者には、その信じた通りの救いが、恵みが与えられる、ということを教えているということになるのでしょうか。それは違うと思います。そのような読み方は大変危険です。それはよく、ご利益を売り物にする新興宗教が語ることです。信じれば病気が治る、治らないのはあなたがまだ本当に信じていないからだ、心の中に疑いが残っているからだ、という論理です。そういう論理で人を意のままにあやつろうとすることが起るのです。ここに語られているのはそういうことではありません。どこが違うかというと、そういう論理においては、見つめられているのは信じる自分の信仰心です。それがどれだけ純粋な、一点の疑いもないものになっているか、ということが問題にされるのです。しかし本日のこの癒しの物語において見つめられているのは、そういう、信じる側の人間の心ではないのです。それでは何が見つめられているのか。それは、主イエスの権威です。百人隊長が、「ただ、ひと言おっしゃってください。そうすれば、わたしの僕はいやされます」と言った時、彼は、主イエスの権威、力を見つめているのです。そのことが９節に語られていきます。「わたしも権威の下にある者ですが、わたしの下には兵隊がおり、一人に『行け』と言えば行きますし、他の一人に『来い』と言えば来ます。また、部下に『これをしろ』と言えば、そのとおりにします」。彼は軍人として、権威の下に生きています。権威とは何であるかを知っています。軍隊は、上官の命令は絶対という世界です。上官が「行け」といえば部下は行き、「来い」と言えば来る、上官が「これをしろ」と命じれば部下はその通りにするのです。それが成り立たなくなったら、軍隊は崩壊してしまうのです。彼は主イエスの言葉が、この世界において、軍隊における上官の命令のような権威を持っていることを信じています。だから主イエスが一言おっしゃれば、その通りになる、僕の病気も癒されると信じているのです。主イエスの言葉にはそのような権威と力があり、語られたことは必ず実現する、そのことを彼は見つめているのです。

　本日共に読まれた旧約聖書の個所、イザヤ書５５章８節以下には、神様のみ言葉がそのような権威と力を持っていることが語られています。１０、１１節をもう一度読んでみます。「雨も雪も、ひとたび天から降れば、むなしく天に戻ることはない。それは大地を潤し、芽を出させ、生い茂らせ、種蒔く人には種を与え、食べる人には糧を与える。そのように、わたしの口から出るわたしの言葉も、むなしくは、わたしのもとに戻らない。それはわたしの望むことを成し遂げ、わたしが与えた使命を必ず果たす」。百人隊長は主イエスのお言葉に、ここに語られているような権威と力とがあることを信じ、そのみ言葉を切に求めたのです。主イエスはその彼の思いを受け止め、「イスラエルの中でさえ、わたしはこれほどの信仰を見たことがない」と言って下さったのです。まことの信仰とは、主イエスの権威、そのみ言葉の権威を信じ、その権威あるみ言葉を求めていくことです。「あなたが信じたとおりになるように」と主イエスが言って下さった、その百人隊長の信仰とは、「イエス様にお願いすれば、病気も必ず治るに違いない」という彼の確信ではなくて、彼が、主イエスのみ言葉にこそ権威があり、力があることを信じ、そのみ言葉を求めたということなのです。その信仰の通りに、恵みが、救いのみ業が与えられていったのです。私たちが神様の救いのみ業にあずかるのは、この信仰によってです。１１、１２節にはこう語られています。「言っておくが、いつか、東や西から大勢の人が来て、天の国でアブラハム、イサク、ヤコブと共に宴会の席に着く。だが、御国の子らは、外の暗闇に追い出される。そこで泣きわめいて歯ぎしりするだろう」。「天の国でアブラハム、イサク、ヤコブと共に宴会の席に着く」、それは神様の救いにあずかるということです。その恵みは、主イエスのみ言葉の権威を信じ、それを求め、それに従おうとすることによって与えられます。東や西から大勢の人が来て、つまりこの百人隊長のような異邦人たちが来て、この信仰のゆえに、救いにあずかる。しかし「御国の子ら」、つまりもともと神様の民とされていたはずのユダヤ人たち、イスラエルの民は、その救いに入ることができない、それは、主イエスのみ言葉の権威を信じ、それに従おうとしないからです。私たちの救いと滅びは、この百人隊長のような、主イエスのみ言葉の権威を信じ、そのみ言葉をこそ求めていくという信仰に生きることができるかどうかにかかっているのです。

　１０節から１２節にかけての主イエスのお言葉は、「従っていた人々に」向かって語られたと１０節にあります。主イエスに従っていた多くの人々のことが、ここにも見つめられているのです。「ここにも」と申しましたのは、先週の、らい病の人の癒しも同じように、主イエスに従っていた大勢の群衆の前でなされたからです。本日の百人隊長の僕の癒しも、主イエスに従っていた多くの人々の前で行われているのです。その人々に対して、この百人隊長の信仰が、つまり主イエスのみ言葉の権威を信じ、そのみ言葉をこそ求め、それに従おうとする信仰が示され、これこそまことの信仰だ、この信仰においてこそ、神様の救いにあずかることができるのだ、と語られているのです。それは、主イエスを信じる信仰者として生きている私たち、礼拝を守っている私たち、あるいは信仰を求めて礼拝に共に集っている者一人一人に対する問いかけです。私たち一人一人が、この話から、あなたは何を信じているのか、何を求めているのか、と問われているのです。私たちはこの２月の半ばに、ほぼ１年かけて礼拝において読んできた５〜７章の「山上の説教」を読み終えました。その最後のところ、７章２４節以下の説教をした時に、私が敢えてふれなかった所があります。それは７章２８節以下の、この説教を聞いた群衆の反応を語っているところです。そこを戻って読んでみます。「イエスがこれらの言葉を語り終えられると、群衆はその教えに非常に驚いた。彼らの律法学者のようにではなく、権威ある者としてお教えになったからである」。あの時ここに触れなかったのは、ここは、本日の８章５節以下を読む時に、合わせて読むのがよいと思ったからです。ここには、山上の説教を聞いた群衆たちが、「驚いた」ことが語られています。何故驚いたかというと、主イエスが、律法学者たちとは違って、「権威ある者」としてお語りになったからです。律法学者たちは、あくまでも律法に基づいて、その解釈を語ります。権威は律法にあり、彼らにはないのです。しかし主イエスは、権威ある者として、つまり神様から遣わされた独り子として、律法を完成させる者としてお語りになりました。そこに、律法学者たちとの根本的な違いがあり、人々はそのみ言葉に驚いたのです。この人々が、山を下りて来られた主イエスに従ってきた群衆たちです。そして今、百人隊長の信仰の言葉を聞き、それに対する主イエスのお言葉を聞いているのもこの群衆たちなのです。そうするとここには、先週のところと同じように、主イエスをはさんで、二種類の人間が相対峙しているということが見えてきます。一方は、主イエスのみ言葉の権威に驚きつつ、従ってきている群衆たち、もう一方は、主イエスのみ言葉の権威を信じ、そこにこそ自分の救いがあると信じ、そのみ言葉を求めている百人隊長です。主イエスの救いに本当にあずかることができたのは、この百人隊長の方だったのです。つまりそこには教えられています。主イエスの権威は、それに驚いているだけでは、その権威によってもたらされる救いにあずかることはできない、ということがです。私たちは、山上の説教において、主イエスの権威あるお言葉、神の子、救い主としてのお言葉を聞きました。それは私たちに驚きをもたらす言葉でした。「敵を愛し、迫害する者のために祈れ」というみ言葉は私たちを驚かせます。「あなたがたの父は、願う前から、あなたがたに必要なものをご存じなのだ」というみ言葉も驚きです。「求めさない。そうすれば、与えらる」というみ言葉も驚きです。山上の説教を読むことは、そのような驚きの連続だったのです。そのような驚くべきみ言葉に引かれて、私たちはこうして主イエスのもとに、礼拝に集っていると言うことができるでしょう。主イエスの後に従っている群衆たちの姿はまさに私たちの姿なのです。しかし、そのようにみ言葉の権威に驚いているだけでは、その権威によってもたらされる救いにあずかることはできないのです。私たちに必要なのは、主イエスのみ言葉に驚くことからさらに進んで、そのみ言葉にこそ自分を救う権威と力があることを信じて、み言葉が自分の上に実現することを願い求めることです。私たちは主イエスの救いに相応しい者ではありません。主イエスを自分の屋根の下にお迎えできるような者ではないのです。しかしそれでも、主イエスのみ言葉にこそ、私たちを救う権威と力があると信じて、み言葉を求めていく時に、私たちが信じた通りに、主イエスの救いが私たちに与えられていくのです。

牧師　藤 掛　順 一

[2001年3月11日]

へもどる。