富山鹿島町教会

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「ナルニア国物語」について 第9回

2.「カスピアン王子のつのぶえ」(1)

 牧師 藤掛順一


 第二巻「カスピアン王子のつのぶえ」に入ります。原書の題は単に「カスピアン王子」です。この第二巻も、「ライオンと魔女」と同じく、ピーター、スーザン、エドマンド、ルーシィが主人公です。衣装だんすを通ってのあの冒険から一年後、四人が休暇を終えて学校の寄宿舎に戻る途中、ある駅のプラットフォームに座っていると、突然魔法の力が強く働き、気が付くと彼らは森の中にいました。そこで彼らは、森の中に大昔の城跡を見付けます。城はもう何百年も打ち捨てられていたようでした。けれどもそこは、いくつかの点で、彼らが王、女王として住んでいたケア・パラベルの城に似ていました。そう、そこはまさしくケア・パラベルだったのです。そのことは、彼らが覚えている通りの場所に城の宝蔵があり、そこに、彼らがサンタクロースからもらったあの贈り物が置かれていたことによってはっきりしました。彼らがナルニアからこちらの世界へ帰ってから一年しか経っていないのに、ナルニアでは数百年が経過していたのです。その間に時代は変わり、ケア・パラベルの城は忘れ去られて廃虚となっていたのでした。しかし昔の宝蔵はそのままに残されていました。ただ、スーザンの角笛だけは見つかりませんでした。スーザンはそれをナルニアでの最後の日に持って出て、こちらの世界に帰ってしまった時になくしてしまったのです。その角笛は、困った時に吹けば必ず助けがやって来るという魔法の角笛でした。
 以前、ケア・パラベルの城は、「大川」の河口の半島にありました。しかし今、そこは島となっており、本土へは数十メートルの海峡を渡らなければならなくなっていました。四人がどうしてそこを渡ろうかと思案していると、一そうのボートが近づいてきました。それには二人の人間が乗っており、二人は縛りあげたナルニア人の小人を海に沈めようとしました。スーザンが弓を射て彼らを脅すと、彼らは海に飛び込んで本土へと逃げました。ピーターたちはボートを引いてきて小人を助けました。この小人はトランプキンという名前で、彼が四人に、ナルニアが今どのような時代で、何が起こっているのかを話してくれました。そして彼の話から、四人がどうして突然ナルニアに来ることになったのかがわかったのです。それは「カスピアン王子」についての話でした。
 今ナルニアは、西方から来たテルマール人という人間たちに支配されています。テルマール人たちは、ピーターたちのいた黄金時代の後、乱れていたナルニアに攻め入り、物言うけものたちを征服して人間の国を建設したのです。物言うけものや小人たちは、人間に追われて森の奥へ逃げ込み、隠れて生活をしなければならなくなりました。木の精たちは眠りについてしまい、普通の木々と区別がつかなくなってしまいました。またテルマール人たちは、東の海の彼方から来ると言われるアスランの伝説を恐れ、海には近づこうとせず、海辺には深い森を植えて、そこにはおばけが住むとうわさしていました。ケア・パラベルが森に埋まり、忘れ去られたのはそのためだったのです。
 そのテルマール人の代々の王がカスピアンという名であり、「カスピアン王子」はカスピアン九世の子供でした。父は早く亡くなり、叔父のミラースが今は王となっており、カスピアンは彼に育てられていました。カスピアンは、乳母から、昔のナルニアのこと、物言うけものたちや木の精、水の精、小人やフォーンたちのことを聞き、ピーター、スーザン、エドマンド、ルーシィの四人の王たちの時代をなつかしむ少年でした。しかしミラースは、その昔の話をすることを厳禁し、そのような時代があったことすら否定しようとしていました。カスピアンに昔のナルニアの話をしたことが知れたために、乳母は追放されてしまったのです。
 乳母が追放された後、カスピアンの家庭教師となったのは、コルネリウス博士という、とても背が小さく、太った人でした。彼が、人目をしのんでカスピアンに「もとナルニア」の話をしてくれたのです。「ここは、人間の国ではありません。アスランの国です。歩く木々、すがたある水の精、フォーンとサタイア、小人と巨人、神々とセントール、ものいうけものの国なのです。はじめのカスピアンが戦ったあいては、それらのものでした。そして、けものや木々や泉をものいわぬものにし、小人やフォーンを殺したり追いはらったりした上に、もといた者の思い出を根こそぎなくそうとしているのは、それはあなた方、テルマール人たちなのです。王が、それらの話をゆるされないのはそんなわけです。」
 そして実はこのコルネリウス博士自身も、小人の血が混ざった混血小人だったのです。コルネリウスがこの話をカスピアンにしたのは、彼が王になったら、隠れ住んでいる「もとナルニア」の者たちを探し出し、彼らを助けてくれるに違いないと思ったからでした。それはカスピアンも願うところでした。彼はナルニアを、もとナルニア人とテルマール人が共に生きることができる国にしたいと願うのでした。
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