富山鹿島町教会

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「ナルニア国物語」について 第19回

3.「朝びらき丸東の海へ」(6)

 牧師 藤掛順一


 アスランとルーシィのもとに、この屋敷の主である魔法使いが現れました。彼はコリアキンと言って、アスランに仕える者であり、アスランから、あの声の主である家来たちを預けられていたのです。アスランは「まもなくまた会えるから」と言って去っていきます。そこにおける彼らの会話も意味深いものです。
 「おねがいです、アスラン。まもなくってどういうことですか?」とルーシィ。「まもなくとは、いつのことをもいうのだよ」こうアスランはいって、すぐさま、消えうせていきました。あとにルーシィは、魔法つかいととり残されました。「ああ、いってしまった!」魔法つかいがいいました。「そして、あなたもわたしも、元気がぬけてしまったわい。だが、これがいつもなんじゃ。あなたは、アスランをひきとどめておくことはできぬ。人にならされたライオンなんかではないからな」
 「まもなくとは、いつのことをもいう」、これは「主のもとでは、一日は千年のようで、千年は一日のようです」(ペトロ三・八)、「主は近い」(フィリピ四・五)という、イエス・キリストの再臨を待ち望む信仰の感覚と通じるものです。あるいは、「私は世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる」(マタイ二八・二0)という言葉ともつながるものです。「人にならされたライオンではない」つまり私たちのもとにつなぎとめておくことはできない自由な主であるイエス・キリストが、しかし常に共にいて下さることを信じて生きるのがキリスト者の信仰なのです。
 ルーシィのおかげで見えるようになったあの声の主たちの姿は大変ユニークな、愉快なものです。彼らは結局「のうなしあんよ」と呼ばれるようになるのですが、それについてはご自分で読んでいただいた方がよいでしょう。
 この「声の島」を出帆して、次に着いたのは「くらやみ島」でした。そこは島のように陸地があるわけではなく、あるのはただ暗闇の固まりでした。彼らはその暗闇の中へと漕ぎ進んでいきました。すると、助けを求める人の声が聞こえてきました。朝びらき丸に助け上げられたその人は「急いでここから逃げ出せ」と叫びました。彼が言うには、ここは「夢がほんとうになる島」なのです。しかもそれは「目をあけていて頭にえがく夢ではない。うなされる夢」なのです。
 それを聞いた人々は、直ちに船をかえしてこの島(?)から脱出しようとします。しかし、いくら漕いでもなかなか抜け出すことができません。そして次第に人々は、それぞれの悪夢にうなされ始めます。あの見知らぬ男は「ぬけだせない!そうとも、もちろんのことよ。わしたちはもう、ぬけだせないぞ。それなのにやつらがこのわしを、らくにいかしてくれたと考えたのは、なんたるばかだったろう。いかれるものか。けっしてわしらは、ぬけだせないぞ」と叫びました。ルーシィは「アスラン、アスラン。あなたがわたしたちを愛していてくださるなら、どうか今、助けをあたえてください」と祈りました。すると前方に小さな光が見えました。その光の中心に、一羽のアホウドリがいて、それが船の方に飛んできてマストのまわりを回り、へさきに止まって鳴きました。そして船を導くように飛んでいきました。船長はその鳥についてかじを切りました。ルーシィはその鳥がマストの上を飛びながら彼女に「勇気あれ、むすめよ」とアスランの声でささやいたのを聞きました。鳥の導きで船はついに暗闇を脱出することができたのです。助けられた人は行方不明の貴族の一人、ループ卿でした。彼らがふりかえってみると、あの暗闇は跡形もなく消え去っていました。
 「これは、なんと!」ループ卿が叫びました。「あなたがたは、あれをうちくだきなさった!」「わたしたちがしたのだとは、思いませんわ」とルーシィがいいました。
 朝びらき丸は、暗闇、悪夢の中から、アスランの守りと導きによって救われました。アスランがその暗闇を打ち破ってくれたのです。 
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